セミくんの夏~GO WILD 7
西丹沢の川越えの道は今年も直っていなかった。「それでもよかったら…」と電話口でおじさんは言葉少なに言った。くりかえしになるが、吊り橋で荷物を運び込むことがいやだったんじゃない。私たちはおじいちゃんとおばちゃんがいないあの場所が、少しずつさびれていくのを見ていたくなかったのだと思う。
ネットでくまなく情報を探す男、相棒がその場所を見つけてきたのは、少し前のことだった。
「ガードレールの切れ目が入口」で「急な坂道を15分下る」という「車では行けないキャンプ場」。そんな場所が30キロ圏内にあるということに、まず驚いた。
「電気も水道もない」キャンプ場。オートキャンプを好まない我が家には願ってもないところに聞こえた。思いきって電話をかけ、場内のようすや駐車場のことを根ほり葉ほり尋ねた。おじさんの感じはよかったが、やはり最寄りの駐車場は、バス停で二つ離れたところにしかないのだという。
車で行く案はパスだね、と私と相棒は笑った。しかし、だとしたら、いったいどうやって行くのか…。この人が公共交通機関を好まないのは知っている。ということは…。
4人でツーリング&キャンプ。それは長いあいだの夢だった。そのうち柳島キャンプ場で試してみよう、と言いあいながら何年も過ぎていた。この時もその案が頭の中にあったことは間違いない。
「でも無理だよね」と言ったのはどちらだったのか。
「せめてさ、下見には行きたいなあ。泊まらなくてもいいから」と私は言った。
相棒はその話を覚えていた。夏休みが始まったばかりの週末、私たち3人(部活でいない海をのぞく)は、まだ見ぬキャンプ場を求めて旅だった。
じゃっぶ~ん!!!
おそらくこれが決め手だった。あるいは汗だくの身体で飲んだビールの味が。相棒は本気で、あの計画を考え始めた。どうやったら荷物を減らせるか、どういうメニューなら持ってくものが少ないか、現地で借りられるものはなにか?
そして彼が真剣に考え、他の家族が協力すれば…大抵のことはできてしまうのである。
私にはこの計画を実現することが、とてもとても爽快だった。
キャンプはいい。野外で過ごすのも好きだ。けれども、贅沢はしない我が家だけど、長年にわたり買いためたキャンプ用品は、いつのまにか押し入れの中でかさばっている。そのほとんどを、こんどは持っていかない、いや持っていけない、ということ。それがこれほどまでに気持ちいいとは!
代わりに、マグカップくらいの携帯コンロとたためる銀マットを買った。
リュック二つは自前、うちひとつは滞米時代に買った20年もの、そしてもう二つはお借りした。ひとりは友人、もう一人はFBでの呼びかけに反応してくれた人。
応えてくれた人がいたこともうれしかったが、見知らぬ人から借りることを相棒が受け入れたことが、私はとてもうれしかった。
私たちはどんどん自由になっていく、そして人と繋がっていく。
さあ、担いでいけるだけのものを持って、旅にでようではないか(続く)。
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