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まつりごと〈政〉の話をしよう 1 新潟3区

昭和一桁の男を父に持ち、新潟三区に生まれた。言ってみればみれば、それが私の根っこにある「政治体験」だ。

 

以前もどこかで書いたが、毎年8月15日になると父が繰り返していた言葉がある。ラジオやテレビから「終戦記念日です」という台詞が流れるたびに、父は決まって「敗戦記念日だ」と呟き返すのだ。聞き手がいようと、いなかろうと少なくとも一日10回以上。「まじ、ウザイ」といまの子どもなら言うであろう。   
父にとって初めて生まれた子どもである私は、性別に関係なく「長子」として育てられた。それはこの家と自分の考えを受け継ぐ子どもということであった。そのせいか、年端もいかぬ頃から新聞に載っていることが、父と子の話題だった。

 

有吉佐和子の「複合汚染」が朝日新聞に連載されていたときは、毎日記事を切りとるように頼まれた。その前から食品添加物の本は家庭にあったけど、事実を詳細に並べていく書き方は迫力があり、ティーンエイジャー、すなわち私の根本にかなり影響を与えたことは間違いない。レイチェル・カーソンの「沈黙の春」もこの頃に読んだ。

 

うちは酒屋だった。新潟の酒屋とくれば「造り酒屋」を連想するだろうが、うちは小売り、しかも食品店あがりの酒屋だったので、食品類は何でも扱っていた。いまのコンビニの元だ。当時は日本酒はもちろん、醤油、みりん、味噌、すべて「量り売り」。駄菓子屋さんを思わせる広口のビン が壁の棚にずらりと並び、店頭にはアイスの冷凍庫があった。 その頃、アイスの値段は10円、黄色いカップのバニラや「ももたろう」というピンクのアイスキャンディを、お客のいない時を見はからっておやつに食べた。

 

父がインテリだったわけではない。戦時中の一時を代用教員として過ごしたらしい父は〈この件については存命中に裏がとれなかった〉、上の学校に進み教職に就くのが夢だったという。父の父の早すぎた死は、その選択を許さなかった。まったく商売に向いていない不器用な性格の父は酒屋を営み、20年近く前にその一生を終えた。

 

当時の酒屋はまた「飲み屋」でもあった。お店には一杯飲みに来る常連さんがいて、おしゃまな私はたいそう可愛がられた記憶がある。一升瓶が持てるほど成長すると、常連さんに注ぐのは私の役目になった。常連客には色々な人がいた。当時〈40年以上前〉としては画期的な「玄米パン」を扱うパン屋さん。旧制高校当時の父の親友たち、くせ者の英語教師や、市議会議員、商店街の顔役など…。そこに飛び交うのは大人の話であり、私は手伝いをしながらそういう話を漏れ聞いて育った。

 

1983年 、田中角栄の金権政治を批判して、野坂昭如が新潟3区から立候補した。この時のことはよく覚えている。私はすでに家を離れていたが、頃は師走、冬休みだったので実家に戻っていた。生まれ育った市は、近隣の市に比べても「金がものを言う商人の街」で、父はいつもそれを嘆いていた。周りは当然田中一色。そんな中、野坂昭如が我が市にも選挙演説にやってきた。父はそれに出かけていったらしい。今は無き「スーパーまるよし」の前だったそうだ。商売が忙しい師走のさなかに、寒風の中を好きこのんで、周囲と反する行動をとりに出かける父を、人は〈母を含む〉「変人」と呼ぶ。   
結局、野坂の出馬は田中陣営の危機感をあおり、田中は22万票という前代未聞の得票数にて当選。ただし江田五月のブログによれば、当選は見込めないまでも「反角の象徴」としての役割は果たしたとか。http://bit.ly/QvMJ0Q

 

父の垣間見た、リベラルの夢は一瞬で消し飛んだのである。

 

ただし、夢は見るものだ。父から受けついたものは多数ある。

 

「敗戦記念日だ」という一言は、マスコミが必ずしも本当のことを言うわけではないことを私の骨身に叩き込んでくれた。また大人の社会には抗しようもない流れがあるが、勝ち目があろうとあるまいと、自分の信じることをやることが正しいと行動で示してくれた。

 

12月16日は総選挙である。選挙権を得てから30余年、かぞえるほどしか権利を行使していない私がこの時期に何ができるか。連載しながら、考えていきたい。

 

〈続く〉   

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コメント

ブログ時おり、読ませていただいております。茅ケ崎市議の小磯妙子さんたちと「ミクシテ」というグループをやっています。茅ケ崎女性センタ―の登録団体です。12/1日もしよろしかったら。

トークセッション講座 哲学する 女シリーズ(2)

「母性はどこヘ向かうのか?ー日本とフランス、カップル事情ー」

日本は子どもを産み、育てやすい国でしょうか。母性は女だけの、母親だけの役割とされてきた日本。今年の世界男女格差年次報告書によれば、男女格差が101位の日本。母性って一体誰のものなのか
現在、出生率がEUでトップクラス、女性が働きながら子育てのしやすい国とされるフランス、働く女性の約7割が結婚・出産・子育てで離職し、少子化の進行する日本。日仏のジェンダー問題研究者が、日仏のカップル・家族観の違いを通して、これからの母性のゆくえについて、映像とトークセッションを織り交ぜながら、刺激的な議論を繰り広げ、参加者とともに考えます。

日時:2012年12月1日(土)  13時半〜16時(開場13時)

場所:茅ケ崎市女性センタ―大会議室

講師:金井淑子(立正大学文学部哲学科教授)

    中嶋公子(日仏女性研究学会代表)

申込み:茅ケ崎市男女共同参画課(茅ケ崎市女性センター)
参加費:無料
    TEL 0467-57-1414, FAX 0467-57-1666

投稿: 松本順子 | 2012年11月28日 (水) 01時01分

松本様

お誘い、ありがとうございます。残念ながら、その日は予定があっていけないのですが、皆様の試みを応援しています。
男も女も自分の身体から感じて考えられる世界が来るといいですね。

投稿: やまんば | 2012年11月28日 (水) 21時43分

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